2012年5月に、消化器疾患のウェブアトラス「EndoAtlas」日本で公開して以来、2013年に欧州、中国、2015年にアジアパシフィック地域、2016年に米州でも公開を開始し、現在、「EndoAtlas」はグローバルで閲覧可能です。
機器や技術の発展によって、近年の内視鏡診断学の進歩はめざましいものがあります。従来の通常内視鏡観察、インジゴカルミンを散布した色素内視鏡観察、超音波内視鏡観察に加えて、拡大観察の普及、NBIやAFIなどの画像強調観察の開発により、内視鏡医が習得しなくてはならない技術や知識が非常に増えています。内視鏡診断学は形態診断学であり、総論的な知識がいくらあっても、その知識を個々の症例に応用できるかどうかは全く別問題です。形態診断学は、実際のいい症例を沢山経験しないとなかなか身につかないものです。
この「EndoAtlas」の目的は、多くの内視鏡に関わる医師が、自分の日常臨床で経験する症例以外にもたくさんの質の高い内視鏡症例に触れる環境を提供する事です。すべての症例に、できるだけ多くの診断手法の良質な画像と所見をどのように拾い上げて診断していけばよいかの解説を病理所見もふくめて掲載しました。このような環境をインターネットを利用して実現することにより、いつでもどこでも個人的にもカンファレンスでも利用することが出来ることで内視鏡診断学のレベルアップに貢献できるとともに、消化器内視鏡医の増加や内視鏡診断学の更なる普及にグローバルで貢献するものと信じています。
「EndoAtlas」に掲載されている症例は食道から大腸までの全消化管疾患と胆膵疾患の症例を対象とし、これら数多くを経験されている専門施設の先生方の協力を得て収集され詳細な解説とともに掲載されたものです。非常に質が高い最新の症例に、いつでもどこでも触れる事が出来る、素晴らしいアトラスになっていると思います。
是非この「EndoAtlas」を世界中の内視鏡医に有効活用していただき、自分自身の勉強のみならず、若い先生の指導教材としてもご利用頂けますと幸甚です。最後に、「EndoAtlas」作成に協力頂いた先生方に厚くお礼申し上げますとともに、このような素晴らしい企画をサポートして下さったオリンパス株式会社に深く感謝する次第です。
2017年初夏
広島大学大学院医歯薬保健学研究科 内視鏡医学
広島大学病院 内視鏡診療科
田中 信治